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1913

身なりのよい人だった。
発車間際、私のとなりにしずかに座った。
気配の大きさで男の人だと分かる。
ジーンズ、セーターの紫、革靴の色が本の隙間から覗く。
東京方面の電車のすく時間だったから
怪しいとは思わなくとも、隣に座るのね、とは思う。

電車が動き出すと、飴のフィルムがさわる音がした。
単純な手順を知っていながら、聞き入ってしまう。
指先でつかんで、破って、そして。
顛末を聞かないとなんとなく落ち着かなくて
そのまま最後の音を待ってしまった。

「もう、人生やりなおしてるよ。」
まったく突然、彼はそう言った。
大きな声でひとりごとを言うような人には見えなかった。
たしかに私は動揺した。
彼の言葉はあまりにも異様で
異様すぎて、空間にそのまま取り残されたみたいだった。

桃の匂いがする。
透明なショッキングピンクで着色された桃の、にせものの匂い。
にせものとしっていながら、まとわりつくその匂いに唾液がしみるのを感じる。
とまらない。
もう本と、焦点が合わない。

からから、と、歯に当たる音が笑うように聞こえて
私は駅を降りた。

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【2008/05/18 22:40】 | Journalとか | トラックバック(0) | コメント(0)

心臓を貫かれて

マイケル・ギルモアの心臓を貫かれてを読む。

噂にたがわずすごい。
村上春樹が最後に言っているように、本当に著者は語りにくそうに、
少しずつ、思い出し、事実を肯定していくように、語る。
辛いものを辛いと書く。後悔を後悔と書く。
すさまじい一家だとは思う。なんと言ってあげたらいいのかわからないほど。
結局生きている人だけが、人を殺してしまえるのだ。

はっきり言えば、ゲイリーは死んだってよかったんだと思う。
逃避させてあげればよかったんだと思う。だってそれ以外、してあげられることがない。
マイケルが言うように、人が責任をもつべきなのは自分の行動で、他人の行動ではない。
シンプルだけど、それは生き延びる術だったんだろう。

国家が、人の命を奪うことなんて日常茶飯事だ。
でも、どんな決定にも末端で実行する人がいて、結局そこで行われるのは一対一の殺人。


我々はあらゆる本とニュースについて語り合った。
時間と材料とエネルギーはありあまっていたから。
間違いなく、私はこの本を彼に貸しただろう。
読み終わるのをまって、また子供じみた議論をしただろう。


2日を通り越して気分は楽になった。
でも、少なくともこういう時が年に2回はやってくるわけだ。

どんなにいい本を読んでも、引き戻されることもある。
【2008/05/04 02:59】 | Journalとか | トラックバック(0) | コメント(0)

mri:

It's been a long time

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