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1913

身なりのよい人だった。
発車間際、私のとなりにしずかに座った。
気配の大きさで男の人だと分かる。
ジーンズ、セーターの紫、革靴の色が本の隙間から覗く。
東京方面の電車のすく時間だったから
怪しいとは思わなくとも、隣に座るのね、とは思う。

電車が動き出すと、飴のフィルムがさわる音がした。
単純な手順を知っていながら、聞き入ってしまう。
指先でつかんで、破って、そして。
顛末を聞かないとなんとなく落ち着かなくて
そのまま最後の音を待ってしまった。

「もう、人生やりなおしてるよ。」
まったく突然、彼はそう言った。
大きな声でひとりごとを言うような人には見えなかった。
たしかに私は動揺した。
彼の言葉はあまりにも異様で
異様すぎて、空間にそのまま取り残されたみたいだった。

桃の匂いがする。
透明なショッキングピンクで着色された桃の、にせものの匂い。
にせものとしっていながら、まとわりつくその匂いに唾液がしみるのを感じる。
とまらない。
もう本と、焦点が合わない。

からから、と、歯に当たる音が笑うように聞こえて
私は駅を降りた。

【2008/05/18 22:40】 | Journalとか | トラックバック(0) | コメント(0)
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